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インド・グジャラート州大地震基金

現地NGO: Friends of All 川根 友さんからのお手紙 
2001年11月3日

フレンズ・オブ・オールを支援して下さった方々へ

  1月26日の大震災から、早くも9ヵ月あまりになります。
  現在、50あまりのNGOが、カッチ県で定住できる耐震性のある家を、被災した家族たちのために建てようと、継続的な活動を続けています。農村部では、都市部に比べて比較的は早く復興が進んでいます。都市部では、新しい都市計画が大幅に遅れたこと、賃貸住宅生活者への補償問題、従来の建築デザインのおそまつさによる人災的要因も加わり、まだまだ仮設住居から出られない人たちがたくさんいます。

  住の問題の他、深刻な論議を呼び起こしているのは、水の問題です。給水不足により、生活用水の不足ばかりでなく、建築事業にも遅れが生じています。また、安全な飲み水の確保も、移住してきた被災者たちにとっては大きな問題です。毎日の沐浴がままならない、衣類を清潔に洗うための水が十分に手に入らない、また、飲み水の嫉の悪さのために病気で苦しんでいる、そういった人たちが我が家と呼べる場所もなく、避難生活を続けています。

  医療という面から言えば、日常生活のレベルで、いかに健康に暮らしてゆくか、いかに病気の予防をするか、ということが非常に大切になってきます。農村部には、わずかな貯えも、家族の突然の病気で高額な治療費に注ぎ込まざるを得なくなった経験を持つ人が数多くいます。現在、最も必要とされているのは、健康づくりの錠は自分たちの手の中にあるのだ、ということを、住民たちに理解してもらい、飲料水の煮沸や、生活環境や自己衛生管理を徹底させることです。

  フレンズ・オブ・オールでは、震災後、2月からブジ市にベースを移し、様々な支援活動を続けてきました。緊急援助活動として、食料品、衣類の配布、テントの配布、また、地元の外科医の協力を得て、震災により外科的処置を必要とするような傷を負った、2000人以上の人たちのための医療キャンプを行いました。その他、車椅子やミシンを贈る運動、学校にゆけなくなった子どもたちのために学用品を贈る運動等々、日本からかけつけてくれたボランティアの方々、計48名の協力を得て、現地調査からはじめ、被災地の方々と直接コミュニケーションをとりながら支援を続けました。「役に立つ」からだけではなく「いっしょに顔を合わせて、時間を共有することこそが大切」だから、ボランティアの人たちの存在は、今回のカッチ県での支援活動で、とても意味があるものだったと思います。今回の災害を1つの出来事として忘れ去ってしまうのではなく、現地の人たちと触れ合うことで、自分自身の体験とすることによって、日本に帰ってからも、他の人たちに語り伝えていってくれることと私たちは信じています。

  4月からは、日本国政府からの資金援助を受けて、日本のNGOとの共同プロジェクトとして、カッチ県の1220家族に対して、フレンズ・オブ・オールが考案した家形テントとベッド及び寝具の配布を行いました。

  被災地各地を訪問するなかで、私たちはフレンズ・オブ・オールとして、何に重点を置いて今後の活動を展開するべきだろうか、と考えました。そのなかで、復興段階において、大半のNGOが家づくりに従事する一方で、最も気がかりであったのは、被災した子どもたちの成長・発達といった重要な点がないがしろにされている、ということでした。

  私たちは、被災地の子どもたちには、以下のような問題があると考えました。

  • 学校校舎の倒壊、教職員の被災による教育施設の不備 空き地や公園などが避難した被災者の生活の場になり、他の子どもたちとの憩いの場がなくなったこと
  • 子どもたちのこころ、及び教育に対する感心が低いこと(大人たちは、住空間の確保に忙しいため)
  • 家族に負傷者・犠牲者がでたために、仕事をして稼いだり、家族の面倒を見なければならない子どもたちが増えたこと
  • 移住により、教育の場がまったくなくなったこと
  • 住居の不備により、家財を守るために家を離れられなくなった子どもたちが増えたこと
  • 家計の収入の激減により、勉強より仕事を選択せざるを得なくなったこと

 フレンズ・オブ・オールでは、7月からイギリスのセーブ・ザ・チルドレンとのパートナーシップにより、カッチ県ブジ地区の都市部・農村部双方で、5ヵ所において被災した子どもたち500人のために「バール・サンパルク(Child Contact)」という名のもとに、子どもたちのための活動センターをつくりました。各センターでワーカーとして働く若者達も、できる限り地元の人たちの中から来てもらっています。センターの場所づくりでは、住民参加を重視し、子どもたちにもできるところは参加してもらいました。

  バール・サンパルクでは、子どもたちのために、週6日午前・午後3時間ずつセンターを開いています。読み書きができない子どもも多いので、基本的なグジャラーティー語、計算などを教えるほか、図画工作、ゲーム、スポーツなどにも時間を割いています。対象年齢は、5〜12歳です。月に1回、手品師、オルガン奏者、手工芸職人、カッチ語の歌をうたえるフルート奏者などのアーティストを招いて、子どもたちに様々な形のアートを紹介します。また、健康診断を月に1回行い、内科医と歯科医をよんでいます。

  子どもたちが、こころも体も健やかに保てるように、また、彼らに笑顔が戻ってくることによって、コミュニティーの人たちの心が明るくなるように、大人と子どもが手を取り合って、植樹やゴミ拾い、その他コミュニティー・ワークをすることによって、環境を大切にすることの意義がわかるようになって欲しいと思っています。また、カッチの伝統的な芸術に対して、理解と親しみばかりでなく、誇りを持って欲しいと考えています。まだまだ、地元のワーカー育成から始めて、課題は多いのですが、子どもたちと一緒に仕事をするというのは、とても楽しいものです。

  私は、地震を体験して、現地での被害の規模を知って、何かしなければという思いに駆られて、今日まで活動してきました。在印9年になり、グジャラート州ではもう早7年になります。娘2人も含め、グジャラートの人たちには、いろいろお世話になったと思っています。今回は、自分のできる分は、こういう形ででも「お返し」したいと思って、仕事をしてきました。それにしても「お返し」どころか、逆に、自分が学ぶ機会を与えられたような具合です。家も財産も失い、最愛の家族に死者が出ても、悲しみをこらえて日々を淡々と送っている、そんなごく普通の人たちに、今まで何人も出会いました。仮設住居を建てている間、私たちにずっとチャイをふるまってくれた村の人たちがいました。母親が家の下敷きになり亡くなった後、家族の面倒は私が責任を持ってみるしかない、ときっぱりと言い切った10歳の少女がいました。「私だけが苦しいのではない」「自分でやれるだけのことはするほかない」といった思いで、その日その日を過ごしている人たちとの数多くの出会いがありました。

  「助ける」という思いよりも「一緒にいてあげたい」という思いのほうが、癒しの力があるのかもしれない、と考えさせられたりもしました。

 遠くに住んでいても、思いやりの心というものは、被災者の人たちをきっと勇気付けてくるものと思います。皆さんのご支援に心から感謝いたします。

国際コーディネーター
フレンズ・オブ・オール
川根 友

 


 


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