インド ダージリン マカイバリ茶園 インド ダージリン国際協力プロジェクト マカイバリジャパン会社概要 お問い合わせ サイトマップ
 

インド国際協力プロジェクト

 > トップページ
 > 懸け橋プロジェクトとは
 > 過去のプロジェクト一覧

 > 第7回白内障キャンプ
 > 第6回白内障キャンプ
 > 第5回白内障キャンプ
 > 第4回白内障キャンプ
 > 第3回白内障キャンプ
 > 日本での研修プロジェクト
 > 第2回白内障キャンプ
 > 第1回白内障キャンプ
 > 協賛企業
 > 2005年玉露プロジェクト
 > 2004年玉露プロジェクト
 > 2003年玉露プロジェクト
 > 福岡正信氏の茶園訪問
 > 2009年エコツアー
 > 2006年茶園ツアー
 > 2005年マハラジャツアー
 > 2004年エコツアー
 > 2001年スタディーツアー
 > フェアトレード<準備中>
 > 水プロジェクト
 > 雹嵐基金
 > グジャラート州大地震基金
 > 共に成長すること
 > Growing Together
 > 2005年 来日講演記録
 > 2009年 来日講演記録
 > 2014年 来日記録 new!
 > 2001年〜2011年<準備中>

 

インド駐在ブログ
ニューデリー駐在員から届く
インドの「今」

 

 
ラジャ・バナジー氏 来日講演会 > 日本語訳

English



界は今、岐路に立っています。悪魔と深海の狭間に私たちは追い込まれています。私たちは地球温暖化と金融破綻という双子の脅威にさらされています。
 昨今の金融破綻は、見境のない産業化と消費主義の飽くなき追求のもたらす欠点を残酷に露呈しました。衰えることのない物質的な欲望の追求が、事実上、世界的な金融制度に破綻をもたらしたのです。私たちはこのような間違いをいったいどこでどのように、どうして犯してしまったのかをきちんと見極めなければなりません。私たちはこの恐ろしい状況に真正面から取り組み是正、この地球の子供たちに健康で生き生きとした未来を約束する持続的な解決法を実践していかなくてはなりません。何千年間も人類を維持し建設的で相乗効果を発揮できるような地球にしていかなくてはなりません。
 さて、持続可能性という橋を支える2つの柱について私たちはしっかりと理解し、明確に定義し、しっかり築いていかなればなりません。この2つの柱とは何でしょうか。ひとつは産業化を牽引する技術です。現在、私たちは生活に重要な役割を果たす技術なしで生きることはできません。携帯電話やコンピューター、テレビ、機械類、自動車、日常生活に便利さをもたらすいろいろな器具や装置なしではやっていけません。ということで技術はなくてはなりません、しっかりと根付いたひとつの柱です。技術が生活で重要な部分を占めるとはいえ、これは私たちが使うものであり、決して我々が技術の奴隷になってはならないのです。
 10年前は、携帯電話など全くなかったのですが、それでも日常業務をこなしていたのです。今ではそれが毎日の生活で非常に重要です。私たちはそれに依存してはならないのです、さもなければ、単なる電気の手錠(枷)が私たちを奴隷にしてしまいます。使用によって自分の平和が保たれるような使い方を見極めなければなりません。私たちは自分のバランスを失うことなく効果的に使うことを学ばなければなりません。これは私たちを取り囲むすべてのハイテク機器についても同じです。つまり重要なのは、技術的な発明を識別して使うことです。見境のない使い方ではなく適切な使用には無駄がありません。無駄がなければ、自尊心が高まります。自尊心があれば、他のすべての生命に敬意を持つことができます。さらに、これは人を自己の解放、自由への探究へと導きます。自由になることは、全人類の究極の望みです。人は独立していなければ、持続可能な存在でなければ、決して自由にはなれません。ということから、解放への最高の道具のひとつが総合的に持続可能になることです。世界的な金融破綻は、基本的な限度を無視した投資銀行の無分別で野放図な業務の結果によるものです。銀行業務の限度は、夢のようなバブルの巨大な利益という見境のない野望をもった銀行幹部に無視され、結局はバブルがはじける結果をもたらしたのです。基本的な基準を遵守するという規律がないために、一夜にいて何百万もの人たちに痛み、苦痛、悲惨さをもたらしたのです。過去20年間、何百万人が穏やかに通ってきたドアが一夜にしてバタンと閉められたのです。そのドアからかつてのように自由に行き来することはできません。その結果、恐慌を招き、日常生活のあらゆる面で巨大な絶望が蔓延してしまいました。これも直接的にせよ、間接的にせよ、この金融機関に関与しているのです。
 さてこのような現在、巨大なチャンスもあるのです。闇夜のとばりは開けられることを人々に示すチャンスです。ドアが閉まるとき、たくさんの窓が開きます。代わりに窓が地球温暖化と金融破綻という双子の難関を克服しようと待機しています。

 これから、私はマカイバリで行われているこの脅威への回答となるような持続可能な解決策をひとつひとつ紹介していきます。
 有機栽培、フェアトレード商品への需要は北半球の国々で驚異的に高まりつつあり、双子の脅威による痛手をほとんど受けていません。これは有機的に倫理正しく育てられた食物は、現代私たちが直面する難問に総合的に対処し是正するという真実がようやく受け入れられたという結果に他ならないのです。これらが生み出す相乗効果が、経済、政治、環境的な必要性に対する包括的な答えであり、それが健全な土壌を創ります。健全な土壌とはもちろん健全な人間のことでもあります。
 フェアトレードとは何でしょうか。どのような仕組みなのでしょうか。フェアトレードの起源についてご紹介しましょう。20年以上前、あるオランダ人が仕事でメキシコを訪問していたときに、メキシコのコーヒー生産者の状況を知って愕然としたのでした。小さな生産者たちは劣悪な条件のもとで辛うじて生計を営んでいました。旅に出てひと時は心を揺り動かされても日常に戻ってしまえば忘れてしまう私たちとは違って、そのオランダ人は新しい使命を開始したのでした。オランダにあるコーヒー業者を一軒一軒訪問しては、メキシコの小規模コーヒー生産者との公平な貿易の大切さを説明して回ったのです。彼はフェアトレード商品を普通のスーパーでも販売してもらえるよう、小さな生産者から正当な価格で直接購入し、コーヒーには、フェアトレード商品である証としてパッケージにかつての小説の主人公で、植民地の人々の権利を守るために活動した改革者の名前にちなみマックス・ハヴェラーとラベルを付けて販売することを思いつきます。そうしてラベル付きフェアトレードコーヒーは、オランダのスーパー・マーケットに陳列されました。売上は急上昇、その後はご存知の通りです。マックス・ハヴェラーのもとでフェアトレードラベル運動はどんどん成長し、その後10年後、世界のフェアトレード・ラベル推進団体が国際フェアトレードラベル機構(FLO)の傘下に統合されました。ヨーロッパのマックス・ハヴェラー、イギリスのフェアトレード財団、ドイツ・イタリア・北米・日本で展開されていたトランスフェアは、人が手をあげている世界共通デザインのフェアトレード認証ラベルの下に統一されました。フェアトレードはコーヒーに続き、カカオでも大きく成功しました。これらの生産者はすべて組織されていない小規模農民のため、関心のある消費者に生活の苦しい生産者の苦境を訴えることは比較的簡単なことでした。
 ところがイギリス人の消費財である紅茶となると、組織化された大きな農園で生産された商品であるため事情が複雑でした。まず世界的な紅茶の生産者には、フェアトレードの倫理基準を満たす小規模生産者が存在しないのです。ようやく今から15年前の1994年になってマカイバリが発見されたのです。世界で最初にフェアトレードとして登録された茶園がマカイバリでした。なぜマカイバリが選ばれたのでしょうか。現存するすべての茶園の中で、マカイバリだけが農地とそこで働く人々の共同体を別の新しい方法で運営する唯一の組織化された農園だったからです。多くの大規模茶園は一般的に今日でも植民地式の階層的に経営されています。それよりもさらに重要なことは、フェアトレードに認証されるための基準のすべてが、これまでマカイバリで実践されてきたことそのものなのです。
 ではどのような仕組みなのでしょうか。消費国の輸入業者は、リーフ・ティーが1kgあたり2ドル10セント、ファニングス・ダージリン茶が50セントという奨励金を茶葉の代金とは別に支払います。奨励金は、ボンのFLOに認められたNGOとインド準備銀行(厳格な条件で外貨送金を監督し逸脱者には厳しい罰則を課す)に送られます。NGOはその資金を直接、マカイバリ合同委員会(MBJB)の口座に振り込みます。マカイバリ合同委員会は、17名のメンバーで構成され、そのうち10名が女性で7名が男性です。茶園の中から選挙で選ばれた14名と経営側に任命した2名。そして、私が唯一の終身メンバーとして全員一致でえらばれ、何か起きたときに1票を投じることができます。言うまでもないことですが、過去15年の間、私は行き詰まった論争を解決するために呼ばれたということは一度もありません。これはすべてのプロジェクトが事前に民主的によく議論された上で決定している事を立証するものです。プロジェクトは広範囲に及びます。家畜の購入と養育、バイオガス・ダイジェスターの建設、民間医療、奨学金、子供への最新式の図書館の設営、革新的な植林計画、女性の自立支援グループ(SHG)の草を使った紙作り、その紙はまた別の女性自立支援グループによりマカイバリの箱作りに使われマカイバリをエキゾチックに仕上げます。また職業訓練、訪問者へのホームステイなどがマカイバリ合同委員会の実施している成功事例の一部です。
 バイオガスについては特別に紹介するに値する、どんな田舎の共同体でも最大の財産といえるでしょう。どんな糞であってもその臭さはメタンガスの臭いから来ています。糞をスラリーにし(懸濁液)、容器に貯め、ガスを放出させます。容器をゴム管で料理用のコンロにつなぎます。魔法のように栓をひねるだけで無公害の再生エネルギーが得られるのです。森林が破壊されることもありません。スラリーはコンポスト・ピットへと流れ込み、最高の治癒力をもった土壌バイオダイナミック肥料となります。
 世界のどこでも背中を曲げて重労働を行っているのが女性であり、それだけでなく残念なことに二流市民として扱われています。マカイバリもかつてはそうでした。女性たちはいつも朝4時に起きて、その日に必要な燃料である薪集めに出かけ、朝食と昼食を用意し、子供たちを学校に、男たちを仕事へと送り出し、自分たちも8時間、茶畑で働きます。夕方に帰ればまた家事、子供の宿題を見て、男たちが自家製の酒で地球規模の問題解決を試みないように監視し、性的に叩かれ役に使われ、ようやく疲れ果てて眠りにつく、ということは、全く贅沢とは言えないでしょう。バイオガスが彼女たちを過酷な苦役(遠くへの薪集め)から救ったのです。有機的に果実や穀物、野菜を栽培するために堆肥を使うことは、市場にある化学肥料で育った野菜を買うお金の節約になるだけでなく、それらを日常的に消費することで健康促進にもなります。余った肥料を茶園に販売し、牛乳を街に売って収入を産み出します。牛を飼い、バイオガスを作り出す仕事は、自尊心ある草の根起業家を育てます。女性たちがこのチャンスを掴んだとき、両方を得て成功が保証されます。故に質素なバイオガスが女性たちの権限を強めます。そして女性たちが強くならない限り、どんな共同体も建設的に前進していくという望みを持つことができません。一旦これらが実現すれば、大きな活動へと発展し、共同体だけでなく国家自体も向上します。ということで、フェアトレードの奨励金は、堆肥の肥料とともに茶園の維持に大きな役割を果たし、女性たちを草の根起業家にすることで女性の権限を強めることに役立っています
 牛にも驚くべき新事実を発見し、マカイバリの経営体制を未来の地方の生活様式の世界的なモデルとしてだけではなく、経営において世界的な先駆者になったことに大きな影響を与えました。18年前に、私は自分の6頭の乳牛の世話を任せていたテージ・バハドゥールと会話していたときに、彼にどれくらい牛乳が取れるのかを聞きました。すると彼は猛烈に頭を掻きました。私が答えを強要すると、彼は、目をそらして4リットルと答えました。それが良いのか悪いのか、わからない状態で、私は彼の牛から取れる量について聞きました。また彼は猛烈に頭を掻きました。なんども説得してようやく彼の牛からは10リットル取れるという回答を得ました。私の牛小屋はあれでよいのだろうか。餌は妥当だろうか。世話の状態はよいのだろうか。運動は充分だろうか。最善の医療を受けているだろうか。これらの質問に、私の牛は限りなく充分な世話を受けていると彼は答えました。ではなぜ彼の牛の半分以下しか搾乳できないのか、という問いには、彼は答えませんでした。これが理由で彼は過去5年間、私のこの質問を非常に恐れていました。私は非常に怒って帰宅して不平を漏らしました。きっとテージ・バハドゥールは牛乳を盗んで売り、生計の不足分を補っているのではないだろうか。自宅で妻のスリルーパは、なぜ怒っているのかと聞いたので、怒ってテージ・バハドゥールは泥棒だと答えました。妻は、私が今までのすべての人生において私が知っている人たちが黙って盗むなど想像すらできない、おそらく過ちは私側にあるはずで、その過ちの原因を確認すべきだと言ったのです。
 翌朝、私は自分で乳搾りをすることにし、惨憺たる苦しみを味わいました。舐められ、尻尾で打たれ、角で突かれました。私はすっかりめちゃめちゃにされました。そこでテージ・バハドゥールが2頭目を搾るのを私が監督しました。すると搾乳量は4リットルだったのです。明らかに彼は盗んではいなかったのです。少ない搾乳量の原因を見つけることができず、翌週から私はもっと落ち込んでしまいました。1ヵ月後、無作為に村人に聞いてデータを集めることを思いつきました。マカイバリの7つの村には、乳牛は全部で1000頭以上いるのです。その結果にさらに私は落ち込みました。最高のもので14リットル、最低でも8リットルでした。
 最初の問いから2ヵ月してようやく私は、この問題を他の視点からみることにしました。私がやっていなくて村人がやっていることはいったい何なのかを調べました。そして私はひとつのことを理解したのです。私の牛はあらゆる面で最高の世話を受けているが、ひとつの点が欠けていたのです。村人たちは自分の牛を世話しているけれど、私は人を雇って自分の牛の世話を任せていたのです。これは驚くべき発見でした。それから私は調査したのです。そしてわかったことは、オーナー自身が茶園を経営しているのは私だけだったのです。他のすべての茶園は、プロの経営者が運営していました。さらなる発見は、過去20年間のダージリン茶の生産量はかなり減少したのに反して、マカイバリは有機栽培に切替えた後でさえ、持ち堪えているのです。自分の牛であれば、牛の飼育について他人からのアドバイスなど不要だということは明白です。このことに気付いてから私たちは能力強化に力を入れるようになり、特にマカイバリの共同体については将来のパートナーとして女性の権利拡大を強化するようにしました。
 10年前まで、世界のどこでも、情報公開については経営者が管理していました。それが権利であり、ほとんどの企業がバランスシートに適するように情報を調整していました。
 インターネットのアーカイブにより、もはや情報公開は経営の重要な手段ではなくなりました。今では世界のどこからでもインターネットからどのような情報もダウンロードできるのです。
 それでは未来にむけて経営者の役割とはいったい何なのでしょうか。経営とは、動機を与えて意欲を起こさせるように鼓舞することです。では、実際に農場なんかで手足を汚したくないと思っているような若者たちにどうやって動機付けをすればよいのでしょうか。むしろロック・スターになりたい彼らに対してです。最初にお話したように、すべての経営者の重要な役割は若者たちが自尊心ある人間になれるように、それぞれに共同体において彼らが価値ある存在となれるような動機付けをすることです。これは彼らをパートナーにしてゆくということです。新しいマントラ(信条、スローガン)は、オーナーシップではなくパートナーシップです。
 この最初のステップとして、マカイバリはダージリン地域で運動をスタートしました。有機栽培組合です。100名以上の小規模農民たちが自尊心ある草の根起業家になりました。
これが目に見える証拠です。『ハムロー・マカイバリ』 (地元で作られた10分間のDVDを送ります。)これが未来です。土壌と、人と、環境と持続可能なパートナーシップを築いた公平な世界が、ホリスティックに関わりあうすべての存在にとって利益のある状態、つまりWin-Winな関係を創り出します。

ページの先頭へ戻る



*を買ってくださった方にサインをするラジャ・バナジー氏。

* マカイバリ茶園主バナジー氏の半生を綴った自叙伝『The Rajah of Darjeeling Organic Tea - Makaibari』Cambridge University Press India Pvt. Ltd.
まさに本のタイトル通り、バナジー氏(通称ラジャさん:Rajah)が1970年代にダージリンで初めてスタートさせた有機栽培に焦点を当て、彼の茶園経営の理念である「Sustainable:持続可能」「Holistic:全体的な調和」をキーワードに、茶園で働く人(フェアトレードによる福祉活動)、動植物(自然保護)、茶栽培(バイオダイナミック農法)、マカイバリファミリー(マカイバリの紅茶を販売・購入、ボランティア、理念を広めてくれる人々)について、大変詳しく書かれています。講演会の話ででてきたジャムニの話も書かれています。本の構成も活字ばかりでなく写真やイラストがふんだんに盛り込まれていて、眺めているだけでも楽しめます。
4,500円(税込み):フランス人映画監督が作ったDVDも入っています。本にラジャ氏のサイン付き。