1950年から1960年のダージリン茶は、蔓延した農薬の使用により生産量が巨大に増加しました。この幸福はたちまち深い懸念へと沈み込みました。なぜならダージリン茶はあらゆる局面で生産量が急降下して減産が明確となったのでした。除草剤の使用、悪化する土壌の浸食が広範な土砂崩れを引き起こし、広大な茶畑が失われ、肥料の投入の増加によっても増産を維持することはできず、化学物質に抵抗力のあるカメムシやハダニのような害虫が病気を流行させ、奇跡の大地を崩壊寸前にまで至らせました。
このように極めて重大なダージリン茶の十字路で、マカイバリは、生態的に敏感なダージリンのヒマラヤでホーリスティクな持続可能な実践の先駆けとして率先して世界的な有機栽培茶の生産に取り組みパイオニアとなりました。バイオダイナミック農法は、減産傾向を逆転しただけでなく、精神的な礎となりました。マカイバリの成功は、ダージリンのカーセオン地区を全世界で最も有機栽培茶園の数の多い地域にしました。じつに70の茶園が有機栽培茶園なのです。今日、全世界で65ヵ国が紅茶を生産しています。
マカイバリには年間5万人を超える訪問者がありますが、最も多い質問が、「なぜバイオダイナミックなのですか」というものです。答えは簡単です。それは、お茶の生産者と消費者に「農業とは大地のたゆみない変化によって決定されるものだ」ということを自覚させるものだからです。この考え方と実践には偉大な美しさがあります。地球は宇宙的な創造物であり、ゆえに我々の考え方も宇宙の自然の力によって決定されます。私たちには機械を造る能力はありますが、すべての植物はお茶も含め、宇宙を源とする自然律によって成長し、自然と調和して存在します。
機械は良くも悪くも、時間や季節に依存しません。一方、すべての農業は自然律に依存します。このような自然の力を理解して調和することは、関わりあうすべての存在に影響を与え、またそれらの要求を満たします。自然の力は生産や繁殖において全体的ですが、機械はそうではありません。たとえば、お茶の木は、茶葉を生み出し、生産が終わる時期には種をつくり次世代にそなえます。逆に機械は摩耗したら交換しなければなりません。ここに、死んだ思想に基づいた秩序と自然律に基づいた秩序の根本的な違いがあります。
今日、経済における社会のストレス、特に欲望が密接に関わるストレスによって、私たちは持続可能な自然律に沿って生活することから、機械に指図された破壊的な秩序の中で生きることを強いられています。生活のペースが技術の爆発的な発展によって決められてしまうという狂乱的な時代です。過去50年間のハイテクの成長のスピードは、過去五千年の技術的な進歩を歩行者にしてしまうようなものです。我々人類の知性と論理から生じたこの巨大に急増した驚異的な技術発展は、生活、旅行、通信、医療などのあらゆる局面に大きな利点をもたらす一方で、我々人間を自然の法則から遥か彼方に遠ざけました。
いま私たちすべてが中立的な立場で冷静に損得を検証すべきです。これらの輝かしい技術的進歩は、把握が非常に困難な複雑な社会問題を生み出しました。それらを理解するには、マカイバリ茶園のようなパーマカルチャー的な自然の中に出てみることが必要です。すぐに安堵感に満たされ、日常の雑事のわずらわしさから解放されるでしょう。そして、観察してみれば、忠実に自然律に従った種まきや、肥料やり、収穫を通して、自然の叡智と分かりやすさを自ずと感じ取ることができるでしょう。すべての喜びに満ちた活動は、一杯のティーカップに凝縮され、強弱のある素晴らしい芳香として味わわれるのです。
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